ヨンとかグンとか1

日本にやって来るアジアの観光客の人の数が増えて久しく、市内でも毎日のようにスーツケースを引きずった人たちの姿を見かけます。街中には中国語の堪能な店員さんを配備したドラッグストアが建ち並び、コンビニには免税用のカウンターが設置され、駅の中やファッションビルのトイレには英語、中国語、韓国語で「トイレットペーパーはゴミ箱に捨てずに流すように」との貼り紙が見られるようになりました。(アジアの他の国では使用済みのトイレットペーパーはトイレに流さず、ゴミ箱に捨てるのがマナーであるからでしょう)

 

また、個人的な印象としてはこの2、3年の間に何度目かの韓国ブームの訪れを感じます。ティーン向けの雑誌の表紙に韓国のアイドルが登場するのも当たり前になりましたし、中身にしても韓国ファッションと韓国コスメ推しがすごい。もう少し上の世代向けの雑誌でもお洒落なソウル特集が度々組まれている。女子高生の制服の着こなし、髪型を見ても韓国好きな子はすぐにわかりますし、街で見かける数も多い。ハングル文字の名札を鞄につけていたら完全にドルファンです。また、昭和の雰囲気漂う鶴橋の街にも大きな変化が見られます。これまでは少数派である韓国芸能好きの人と韓国系の地元の人たちが集っていた街だったのが、韓国ファッションを着こなす若い男女で狭い道はいっぱい。アイドルグッズを扱う店の数もいつのまにか増えており、こないだまで閉まってたよね?というスペースにソウル直輸入的なお洒落なカフェができていたり。とりあえずアイドルグッズを売る店が急増していて驚いた。また、昔ながらのごはん屋さんにしても鉄則のように必ずこの3点が押さえてあるのがすごい、とても商売上手。メニューには今日本で流行中のチーズタッカルビ、店内の高い場所に配備されたテレビ画面には女性グループの認知度で一二を争うTWICE、男性グループでは今一番勢いづいている(とわたしには思われる)BTS。この3つを出しておけばとりあえず韓国好きはやって来るだろうと。その通りです。

 

2008年あたり、韓国と言えば東方神起やBIGBANG、少女時代だった当時は(もちろんその他のグループも日本にやって来ていましたが)、韓国のアイドルが好きなんて周りの人にはなかなか言えなかったと当時韓国好きだった人たちはみんな言います。そんなことをうっかり口に出したら白い目で見られることは必至だったと。ああ、東方神起ヨン様ねと苦笑されると。日韓の関係の在り方も関わって来るこのジャンルを愛することは茨の道を進むことであったとわたしも思います。

 

今韓国の文化が日本で大流行している理由は、まずアイドルの文化の強さ。日本のアーティストにはないファッション性の平均的な高さ、音の良さ、パフォーマンスのレベルの高さ、売り込み戦略の激しさと巧みさ、だいたいこんなところだと思います。そして日本のものとは全く異なる服装や化粧の流行。韓国と日本の文化のどちらがより優れているとかそういう話ではなく、わたしが惹かれるのは文化の差異の面白さとそれが引き起こした今の状況です。俯瞰して見ているととても興味深い。

 

当時の韓国のボーイズグループはウルフカットか短髪、何の変哲も無い茶髪で衣装も日本のジャニーズと大差ない印象です。ガールズグループにしても服装は特別お洒落とは言い難く、毛先を空いたロングの茶髪か黒髪ばかり。化粧も日本と変わりない雰囲気。ところが、これはわたしの想像であり単なる印象ですが、2013年から2014年にかけて韓国のファッションやデザインは唐突に洗練されます。この年に何が起こったのかはわからないのですが、一般の人を含め以下のような変化が。さえない茶髪でウルフカットだった男性たちは皆ヨーロッパのインディーバンドに時々見られるボブカットになり、女性たちの間では目立たない程度のアイラインにあのアイコニックなティントリップというメイクが主流になります。髪型は前髪を厚めに作りがちな日本の流行とは異なるボブやロング。また、男性のボブカットはそこから更にセンターパーツのふんわりした髪型に進化します。このセンターパーツの髪型の人はクラシックな型の眼鏡をかけていることが多いような。最近日本にも定着してきた丸眼鏡もそう。服装はkinfolkを愛読しているヨーロッパの人たち(想像)そのまんま、のようなシンプルな着こなしばかり。アイドルたちに男女問わず見られるのはピンクやオレンジ色の髪、高価なハイブランドのストリート寄りの衣装といった感じで、一般の人たちとはかなり異なってはいますが、韓国ファッションといえばこちらを思い浮かべる人の方が多いと思います。

 

音楽に関してもメモしておきたかったんですが長くなりました