ヨンとかグンとか2

わたしが考える韓国の文化の強みは海外の流行に対するフットワークの軽さと吸収力、再現力の高さと速さ。向こうの中高生が気の狂ったようにキャーキャー追っかけ、また興味のない人たちからは「アイドルなんて」と鼻で笑われている人気のアイドルグループのMVを見るとしかし、アメリカの西海岸とかでロケしちゃってる映像はお洒落だわ、髪型も衣装も素敵だわ、音は俗っぽく言うと「今流行ってる洋楽みたい」だわで驚いたものです。大手の事務所所属ではないグループにしても大体同じような感じ。日本のアイドルとは全く別の方向に全力で進んでいる、それがここ数年の韓国のアイドルに対する印象です。国内のファンで事足りてしまう日本のグループとは違い、初めから海外に発信すること前提で活動をしているという点も大きいとは思います。リーダーの英語力と彼の世界中の音楽に対する興味と耳の良さ、それらを下敷きにアメリカでファンを着実に増やしているBTSの躍進もありますね。

この月末にはフジでの公演を終えたラマー先生がソウルに飛びますが、そこで何かしらの絡みはあるんでしょうか。リーダーはめちゃくちゃケンドリックのファンだと思うんですが、その愛が強すぎたせいか過去にラマー先生の詞を盗作し、公式に謝罪というやらかしがありますので本人と顔を合わせるのは難しいかな。その盗作した曲がuというのには驚きました。それを選ぶあたりにも愛を感じる。韓国のメディアがラマー先生に指でハート作らせて「愛してまーす」をやらせないかが一番心配なところです。ハリウッドの俳優たちは軒並みやらされているのでラマー先生にもその矛先は向けられる気がする。

 

洋楽好きの人にもウケが良かった、良さそうなアイドルまたはアイドルではないアーティストの曲の一部。韓国にはええ感じのR&Bやヒップホップも多く、なかなか紹介しきれません。

 

ひたすらに映像も音も美しい

 

https://m.youtube.com/watch?v=nKDppUjuvdM

男の子こそハマりそうな曲だと思うんですが

https://m.youtube.com/watch?v=Oz3mm3tPKfg

この音

 

 

https://m.youtube.com/watch?v=px2Q47O0_eE

『マルホランドドライブ』や『ツインピークス』みたいな不気味なビデオも良い

 

https://m.youtube.com/watch?v=eelfrHtmk68

https://m.youtube.com/watch?v=rCeM57e2BfU

彼は韓国を拠点にした世界的なアーティストと言ってもいいかもしれせん

https://m.youtube.com/watch?v=uLUvHUzd4UA

見た目は怖いけれど

https://m.youtube.com/watch?v=FNnYIIdTBhQ

この3人を勝手にkpopのR&Bの御三家と呼んでいるんですが、

個人的にcrushが一番好きです ムラがなくて

https://m.youtube.com/watch?v=36HvpOE4opQ

このへん探すとええ感じのアーティストに出会えます

足し算と引き算、グローバリゼーションと呼ばれるものについて

日本のお洒落って「お洒落しています」と主張しなければならないというか、何かを目に見えて付け足すという動作をしないとお洒落と見なされないというか、そんな感じがします。もちろん日本にもシンプルな服装と髪型を好む人たちは見られますが。女性の化粧にしても、アイシャドウを最低2色は使って目元に陰影を作り、引いていると見てわかるようにアイラインを引き、マスカラを塗り、チークを塗り、リップに色を載せる。ケバいとかではなくて、顔のパーツ全てに何かを施すことで化粧の完成とするその一連の流れが日本らしい足し算の文化だなあと。

日本の男性で圧倒的に人気なのは髪の量を減らしてワックスで形を作る髪型ですよね。日本の男性を見分ける方法は髪型のワックス使いの量、そして眉毛の形を本来の形よりも細く整えているかどうかだと思います。髪と眉毛にやたらと手を加えている男性を見ると、日本人だなあとしみじみするわけです。

反対に、髪型にしても服装にしても、ここ数年の韓国の流行は引き算のお洒落なんだなと思います。テレビ番組で見かけたのですが、日本の男性が化粧品の中で一番お金を使うのが整髪料だそうです。一方、韓国の男性は化粧水といった基礎化粧品。顔の美醜や職業に関係なく、化粧水と日焼け止めを若い男性が使うのは当然のこと。そして、流行しているのはサラサラのボブカット。こういった理由から、韓国に進出するのにはとても苦労すると日本の整髪料メーカーの人が話していました。おもしろい。

 

『垢抜けることイコール眉毛を整えること』という文化ですが、日本の男性の間で恐らく15年以上は続いていると思います。他のアジアの国では眉毛に剃刀をあてる文化はないみたいですね。なんでだろう。昔から本当に気になっていてしかたありません。髪にワックスをつけている方が、眉毛が整っている方がイケてるという文化の成り立ちと歴史をご存知の方がいたら教えてください。坂口健太郎といったメンズノンノモデルや星野源菅田将暉のような頭や眉毛をトゲトゲさせない男性芸能人も増えてきてはいますが、それでも男性向けのヘアカタログを見るとまだまだワックスとトゲトゲの天下のようです。

と思っていたら最近アメリカのラッパーと呼ばれる人たち、果てはアフリカにルーツを持つ世界中の男性たちの眉毛の多くが整えられていることに気づき更に謎は深まっております。アフリカに関連はないけどクリスティアーノ・ロナウドもそうだな。眉毛の細さは男らしさの象徴なんでしょうか。各国の髪型と眉毛の文化史に関する資料があれば読んでみたいものです。

 

韓国ファッションのタイ人の男女、韓国好きの日本人の女の子、ソウル外から来たんだろう垢抜けない格好の韓国人の男の子、韓国好きの日本人の彼女に影響されて韓国アイドル風の格好をしている男の子。日本人のような服装の台湾人の女の子。アイドルのような派手な服装をしているわけではないシンプルな服装の韓国人の女の子。アジア間での文化の溶け合い。そういったものを考えながら大阪の街を歩くのも楽しいです。

ヨンとかグンとか1

日本にやって来るアジアの観光客の人の数が増えて久しく、市内でも毎日のようにスーツケースを引きずった人たちの姿を見かけます。街中には中国語の堪能な店員さんを配備したドラッグストアが建ち並び、コンビニには免税用のカウンターが設置され、駅の中やファッションビルのトイレには英語、中国語、韓国語で「トイレットペーパーはゴミ箱に捨てずに流すように」との貼り紙が見られるようになりました。(アジアの他の国では使用済みのトイレットペーパーはトイレに流さず、ゴミ箱に捨てるのがマナーであるからでしょう)

 

また、個人的な印象としてはこの2、3年の間に何度目かの韓国ブームの訪れを感じます。ティーン向けの雑誌の表紙に韓国のアイドルが登場するのも当たり前になりましたし、中身にしても韓国ファッションと韓国コスメ推しがすごい。もう少し上の世代向けの雑誌でもお洒落なソウル特集が度々組まれている。女子高生の制服の着こなし、髪型を見ても韓国好きな子はすぐにわかりますし、街で見かける数も多い。ハングル文字の名札を鞄につけていたら完全にドルファンです。また、昭和の雰囲気漂う鶴橋の街にも大きな変化が見られます。これまでは少数派である韓国芸能好きの人と韓国系の地元の人たちが集っていた街だったのが、韓国ファッションを着こなす若い男女で狭い道はいっぱい。アイドルグッズを扱う店の数もいつのまにか増えており、こないだまで閉まってたよね?というスペースにソウル直輸入的なお洒落なカフェができていたり。とりあえずアイドルグッズを売る店が急増していて驚いた。また、昔ながらのごはん屋さんにしても鉄則のように必ずこの3点が押さえてあるのがすごい、とても商売上手。メニューには今日本で流行中のチーズタッカルビ、店内の高い場所に配備されたテレビ画面には女性グループの認知度で一二を争うTWICE、男性グループでは今一番勢いづいている(とわたしには思われる)BTS。この3つを出しておけばとりあえず韓国好きはやって来るだろうと。その通りです。

 

2008年あたり、韓国と言えば東方神起やBIGBANG、少女時代だった当時は(もちろんその他のグループも日本にやって来ていましたが)、韓国のアイドルが好きなんて周りの人にはなかなか言えなかったと当時韓国好きだった人たちはみんな言います。そんなことをうっかり口に出したら白い目で見られることは必至だったと。ああ、東方神起ヨン様ねと苦笑されると。日韓の関係の在り方も関わって来るこのジャンルを愛することは茨の道を進むことであったとわたしも思います。

 

今韓国の文化が日本で大流行している理由は、まずアイドルの文化の強さ。日本のアーティストにはないファッション性の平均的な高さ、音の良さ、パフォーマンスのレベルの高さ、売り込み戦略の激しさと巧みさ、だいたいこんなところだと思います。そして日本のものとは全く異なる服装や化粧の流行。韓国と日本の文化のどちらがより優れているとかそういう話ではなく、わたしが惹かれるのは文化の差異の面白さとそれが引き起こした今の状況です。俯瞰して見ているととても興味深い。

 

当時の韓国のボーイズグループはウルフカットか短髪、何の変哲も無い茶髪で衣装も日本のジャニーズと大差ない印象です。ガールズグループにしても服装は特別お洒落とは言い難く、毛先を空いたロングの茶髪か黒髪ばかり。化粧も日本と変わりない雰囲気。ところが、これはわたしの想像であり単なる印象ですが、2013年から2014年にかけて韓国のファッションやデザインは唐突に洗練されます。この年に何が起こったのかはわからないのですが、一般の人を含め以下のような変化が。さえない茶髪でウルフカットだった男性たちは皆ヨーロッパのインディーバンドに時々見られるボブカットになり、女性たちの間では目立たない程度のアイラインにあのアイコニックなティントリップというメイクが主流になります。髪型は前髪を厚めに作りがちな日本の流行とは異なるボブやロング。また、男性のボブカットはそこから更にセンターパーツのふんわりした髪型に進化します。このセンターパーツの髪型の人はクラシックな型の眼鏡をかけていることが多いような。最近日本にも定着してきた丸眼鏡もそう。服装はkinfolkを愛読しているヨーロッパの人たち(想像)そのまんま、のようなシンプルな着こなしばかり。アイドルたちに男女問わず見られるのはピンクやオレンジ色の髪、高価なハイブランドのストリート寄りの衣装といった感じで、一般の人たちとはかなり異なってはいますが、韓国ファッションといえばこちらを思い浮かべる人の方が多いと思います。

 

音楽に関してもメモしておきたかったんですが長くなりました

落とせないiPhone

わたしのピープルおかしくないですか?

勝手に iPhoneが組んでたやつなんですけど選択の基準がよくわからない

ちなみに左上から時計回りにkpopのRed Velvetのイェリちゃん、f(x)のクリスタル、Red Velvetのスルギ(半島で一番推してる)、Rooney Mara、ケンドリック先生、Red Velvetのウェンディ

f:id:sufj08:20180514225055p:image

 

空港からホテルまでの40分、マイナス6度

iPhoneの天気予報によると、ベルリンの気温はマイナス6度だった。意を決して外に出る。体験したことのない、いっそ爽やかに感じるくらいの寒さ。日が落ちきった暗さに怖じ気つきながらタクシー乗り場を探した。道路に囲まれた中州のようなところに蛍光のオレンジ色のベストを着た男性が。見回してみるとやはりタクシー乗り場はそこのようだった。信号のない道をどうにか渡り、中州に一歩乗り上げた途端に蛍光のオレンジ色が半ば怒鳴るようにあれだあれだ、と私の後ろを指差し、振り向くと私と大して歳の変わらないようなお兄さんが仏頂面で立っていて、ハロ、と一言。


空港からホテルまで乗せてくれたのは恐らく中東にルーツを持つお兄さん。ハロ、と言ったきり、あとは無言。こういうものかと思いながら窓の外を眺める。日本時間で考えると朝の4時から夜中の1時近くまで起き続けていることになる。12万円払って、そして12時間をかけて憧れのベルリンにやってきたというのに、私は疲労と不安のせいで心底参ってしまっていた。これからタクシーを降りて知らない街に飛び出して行かなくてはならないなんて。タクシーを降りる前の会計も、チップの計算も恐ろしい。なんで来ることにしたんだろう。大阪に帰って自分の部屋のベッドで寝たい。

 

タクシーの車内で流れていたのは、聞き覚えのある曲だった。軽快なジャズのような、音と音の隙間が心地よい音楽。ソウルキッチンの料理をする場面で使われていた気がする。そのひょうきんとも言える音が夜のベルリンの街の景色が妙に似合っていて、なんだか自分がジム・ジャームッシュの映画の登場人物になったような気持ちになり、頬が緩んだ。かかっていたのはラジオのようで、曲が変わると歌い手も変わった。どれも落ち着く音ばかりだった。プレイリストを知りたいと思うくらい。お兄さんに話しかけようと思ったきっかけだった。


信号が赤になったタイミングでこの音楽好きです、と言うとずっと黙っていたお兄さんの表情が明るく、豊かになった。これはジャズミュージックだよ。仕事の時はこれにするんだ、リラックスできるから。普段はジャーマンラップを聴く。ポップミュージックはどれも同じに聴こえるでしょ。

 

それから、お兄さんは窓の外に現れる建物や道を指しては説明をしてくれるようになった。ベルリンは新しい街なんだ。どんどん新しい建物ができてる。それも、あのビルも、できて2年くらい。(確かに雰囲気が梅田の北エリアに似ている。)この両脇の建物は医療系の大学。この建物は知ってる?有名な劇場だ。フォルクスビューネ。この駅からはヨーロッパのどこにだって行ける。パリ、ロンドンなんか9時間くらいかな。これから東のエリアに入るよ。道が広く、建物も大きくなってくる。ほら、有名なテレビ塔だ。あそこにはレストランがあって、食事ができるんだよ。あの丸い部分が回転するから街中を見渡せる。(回転することは知らなかった。)この辺は戦争の後、全て破壊されたんだよ。


実際にその場に行ってこの目で見たいと思っていたフォルクスビューネも、Teacher's houseの東独時代の壁画も、カールマルクス通りのあの本屋も、このタクシーの窓から見たものがきっと一番の思い出になる。お兄さんの説明に相槌を打ちながら、そう思っていた。零下の気温だろうに、白い息を吐きながら自転車を乗り回す人たち。物を食べながら歩道を歩く女の子。無骨なアパートのカーテンのない窓が、不思議な紫色やピンク色に光っている。ガラスの向こうの灯の中、食事をしながら笑い合う人たち。椅子もドアもないOaseの店の前にも、連れ立って食べ物を頬張る人たちがいた。ベルリンだなあ。微笑ましく思いながら見ていたら、帰りたいという緊張が和らぎ、前向きな力が湧いてきているのがわかった。興味のあるものに向かっていける、それを楽しむことができるという自信と期待。


好きなアーティストは、と聞くと具体的な名前は出てこなかったけれど、仕事で聴くのはジャズだけど、普段はドイツのラップだな。知ってる?どんどん新しいアーティストが出てきて盛り上がってる、とのこと。ヨーロッパの中東系の男性はヒップホップが好きな人が多い、というイメージがここでも肯定された。ヒップホップがどのような環境から、どのような感情を伴って生まれてくるのか。ドイツのラッパーのほとんどは移民のルーツを持つ人たちになるのでは、というのが私の長年の推測だった。特にドイツ、そしてベルリンにはトルコ系の人たちが多い。もちろんベルリンでコンサートに行く予定があることは彼には言わなかった。それは彼の聴くヒップホップとは全く別のものだからだ。

 

貧乏旅行だというのに、街を見せてくれたから、と伝えてチップを弾んでタクシーを降りた。